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学び舎の音楽のとびら(2)張り子の楽団、実を結ばず

 大学のオケ(オーケストラ、管弦楽団)に入ろうと意を決し、説明会にも行った。練習見学にも行った。アンケートには「バイオリン希望」と書いた。
 そして、入部説明会にも行った。この時点でもう殆ど気持ちを固めている・・・つもりだった。だったのだが。
 入部希望の同志に馴染めない。
 まずは、その圧倒的な女子学生シェア。女だらけの環境など、高校のときのウタゴエ部で慣れているはずだったが、あのウタゴエ部が良くも悪くも「馴れ馴れしい」感じがあったのと対極的で、お互いに話をしようという気が全く起きない。加えて、高校までは田舎くさい感じが親和性を促進していたのに対し、この女子群はなんというかお嬢様系で、なにか主従の関係すら漂うのである。お嬢様と書いたが美人が多いという意味では決して無い。
 男子はというと、今の記憶であるが弦楽系では私を含めて3人ぐらいしかいなかったようだ。やや大人しい雰囲気ではあったが普通には話せたと思うので彼らが嫌だ、ということはなかった。しかしいわゆる「明るいバカ」も皆無で、息が詰まる感じがした。
 
 ともあれ、とりあえず体験入部となり、練習ルームで、はじめてバイオリンを持たせてもらった。肩の凝りそうなポーズで弓を弾いてみる。油の切れたドアが開く時のような、情けない音しかでない。それは仕方が無いかな、と思った。
 それよりも、この体験入部の際、4年生の先輩男女2人(後で分かったが団長とコンサートマスターだった)が、新歓コンパの話をしていたが、冗談ではあるだろうが「潰してやる」と言ってて、たったそれだけなのに私は完全に怖気づいてしまったのだ。今でこそ酒大好きな瑠璃カケスも、さすがに18歳当時は大酒も飲めず、無茶な酒は徹底的に回避したい気持ちでいっぱいだった。「オケにいたら、潰されるかもしれない・・・」誰に言うとも無く、そのごの練習でも一人でビビっていた。

 その後、はじめてオケの合同練習を見学した。顧問の先生がタクトを振るって、6月の定期演奏会で演奏されるであろう楽曲をやっていた。
 この時間が異様に長かった。まず、「このオーケストラは素人から見てもとてつもなく下手だ」ということに改めて気づかされた。原因は金管楽器系。実際、先生に何度も何度も止められて、豆腐屋のラッパでも間違えないフレーズを屁のようにすかしていた。弦楽器のほうは良し悪しが分からなかったが、そんなことよりも「チームとしてやっていけるのか」余計に不安に思った。
 時間の経過が遅くてだるかった練習も終わりとなって、ヤレヤレと思っていたところで、先生が「今度は新入団員の歓迎会ですね、楽しみにしています」と言ってたのでまた思い出した。そうだ酒から逃げないと・・・この日1日で、もう、オケに入部する気は無くなった。

 日が経たないまま、結局私は入る気が無かった筈の男ウタゴエ部に正式入部することになった。オール男で1年生部員が全員同じ学部という要素は、デカかったのだ。高校までの合唱経験もあって、入部は非常にスムーズにいった。男部も実際はそうとうキテる感じの先輩が多かったが、オケの上から目線的な雰囲気はないだけ、ストレスフリーだった。
 
 一方、オケの方は部室へ赴き、団長に入部取り消しを願い出た。即時OKが出たわけではなかったが結果は当方の申出を尊重して受理してもらった。ここまで書かなかったが、オケには、高校のウタゴエ部出身の先輩がいて(4年生、ビオラ所属、高校のウタゴエ部はソプラノ所属)こちらの慰留が強かった。私としても、その先輩を頼りにいろいろ話を聞いてもらっていたし、申し訳ないとは思っていた。その他にも、わずかながら残ってほしいと言ってくれる先輩もいて、勝手ながら「ああ、中には血の通った人もいるんだな」などと思った。

 そういうわけで、管楽器→合唱→弦楽器の音楽三段跳びプランは短命に終わった。とくべつ合唱が好きというわけでもなかったのにまた続けてしまったが、結局、音楽がどうとかというよりも「仲間(友達)がほしかった」という気持ちが強くて、新たなチャレンジを拒んでしまったことになる。
 
 入学式でヘンデルの「ハレルヤ」を演奏してたオケは、4年後の卒業式典でも同じ「ハレルヤ」を演奏していたが、入学時とは比べ物にならないほど滅茶苦茶下手糞になっていた。定期演奏会でも誰も知らないマイナーな作曲家の楽曲を引っぱり出してきたり、先述のコンサートマスターが演奏会当日になって急遽変更になったりと、迷走を極めた。
 それでもお構い無しにそのまま入部し、バイオリンでドレミを奏でることができていれば後悔することはなかっただろうか。今になっては、もう想像することもできないでいる。
by lidth-s-jay | 2009-04-19 13:17 | クラブ活動