暴君タイヨウ(前編)

 うちの中学校は、田舎ということもあるが、1学年270人近く生徒がいるわりには比較的おとなしい学校で、あからさまな不良グループはいなかった。タバコとか喧嘩はまあまああったけど、ガラス割りや暴走族乱入などは1980年後半ということもありドンドン過去の歴史へと変わっていて皆無だった(1年生だった頃は上の学年に不良っぽいのがいたしバイクの乗り入れもあった)。

 ただ、不良とかよりもタチが悪いのが「不良の枠を外れない乱暴者」である。普通に授業を受け部活動もやる。だけど気に食わないことがあるとすぐ暴力をふるう。ケガはしない程度に殴られるので、身体的ではなく精神的ダメージを受けることが多い。「いじめ」とは違い、無差別にキレまくる。
 「タイヨウ」という名の男が、まさにそれだった。



 私は彼と1年・3年で一緒だった。小学校の頃から知っているのだがクラスで一緒だったのは小1・2で、確かにすぐ暴力に訴えるドキュン男だった。
 
 中学1年。最初は何故かおとなしく振舞っていたタイヨウ。少し大人になったのかな、とこちらも心開いて話したりしていたが、1ヶ月も経たない間にまた元通りのバカに戻ってしまった。
 体育の授業でバレーなどのチームプレイ、タイヨウはチームの誰かがちょっとミスをするとすぐ罵声を浴びせる。とりあえず謝っておかないと今度は蹴りを入れてくる。私もよく被害に遭った。
 短気も短気、これが戦国時代で刀でも持たせたらどのぐらい人を斬ってたんだろうというぐらい。そして何かしらないが妙にまとった威圧感と優れた運動力。タイヨウからは誰も逆らえない雰囲気ばかりが漂っていた。実際だれも挑もうとせず、ただ一方的にボコられるだけだった。
 かと思うと、普段はフツーに話しかけてくる。多少こづいても笑っているだけ。くだらないシモネタ話を繰り広げて喜んでいた。あと女子には手を出さない。そういう面を見ていると、性善説を信じている1年生のクラスメイトは先生に密告だの団結排除という手段を考えなかった。そして油断した隙に胸ぐらをつかまれ、蹴りが入る。

 私は誰かに密告されるのが嫌で下手なことは言うまいと決心していたのだが、他の連中は「タイヨウ君は気が短い」「次は同じクラスになりたくない」など次々にこぼしていた。私はとにかく「体育でタイヨウと同じチームにならないよう祈ろう」それだけを考えていた。
 そうそう、誰もタイヨウを呼び捨てしなかった。みんな呼ぶ時は「タイヨウ君」。

 デコとアゴが発達した、まるで帝都物語の「加藤」(嶋田久作)のようなタイヨウは、1年生の1年間、我々クラスメイトを苦しめた。そして明けて2年のクラス替え、私はその地獄から一旦解放された。しかし、つかの間の1年間だった。
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by lidth-s-jay | 2004-12-20 17:00 | 中学校専用