暴君タイヨウ(後編)

 さて、3年で、またもタイヨウと一緒になってしまった。1年生なんて半分小学生みたいなものだったのに対して、3年にもなれば少しは大人な考えも根付いてくるのだろうか、こともあろうに
タイヨウはクラス委員長に担ぎ出された。




 多分誰かが推挙したのだろう。ただ、この選択肢はある意味間違ってはいなかったかもしれない。クラスの権力ピラミッドが揺るがない為には、実質的な力を持つタイヨウに、表舞台に引きずり込むことは、「毒をもって毒を制す」に通じるものがあった。
 ただ、1年の頃と違い、クラスには、メンバーも穏健派ながら男女に絶大な人気を誇る「ヤッチ」と、自分より威張る人間を許さない強硬派の「アツシ」がいた。
 相変わらずクラスのみんなが「タイヨウ君」と媚びへつらう中で、ヤッチは「タイヨウ」と呼び捨てしていた。彼にとっては別に他意なくそう言っていたようであるが、少々マヌケで誰にも優しいヤッチは、やがて彼がクラスのリーダーとなる。
 一方アツシは単にタイヨウのことが嫌いなだけで、特別な行動は控えていた。私もアツシとはあまり仲が良くなく、最初は「どっちもどっちだ」と思っていた。

 さて、委員長となったタイヨウだが、前半期は1年の頃とあまり変わらなかった。私も肩がこすれただけでぶち切れて壁に叩きつけられたことがあった。昼休みの野球でヘマするとクラス内で散々な暴言を吐きまくられたこともあった。我々同級生だけでなく、担任のクラミ先生にも授業中暴言を吐き、「お前はあたまがおかしいんじゃないか!?」と先生まで言ってはならない言葉を放たせた。
 委員長としての仕事は、何かしていたような気がするが、本人の満足度と我々の評価とは大きなズレがあったようだ。前述の「毒をもって・・・」の、対象となる毒が、このクラスにはいなかった。結局使えない毒タイヨウは、「やっぱりただのキレるバカ」の印象を根強くしたとともに、我慢できなくなったクラスメイトは緩やかながらタイヨウから避けていった。

 後期は委員長職も解かれ、ただのバカと成り下がったタイヨウ。クラスの権力は完全にヤッチとアツシが握っていた。
 秋口、クラスの話し合いで茶化していたタイヨウに、アツシは平然と「お前だまっとれ!!」と怒鳴った。タイヨウが言い返さないのを見た我々は「なんだこんなもんか」と思うようになり、「タイヨウを無視しておけば済む」ことをようやく学んだ。ヤッチは「何であんな奴のことで?(笑)」と不思議そうな顔で我々弱虫軍団を従えていた。
 ちなみに私は後半期、それまで不仲だったアツシと和解しており、元々小学校のクラスメイトだったヤッチとは懇意であった。他の連中の結束も大きくなり、2学期が終了するまでに「タイヨウの孤立化」は完成していた。卒業間近というのも皮肉な話ではあるが。
 
 誰もタイヨウに話しかけなくなり、相手するのも適当だった。当のタイヨウ本人は、というと、さすがにその空気を察してはいたものの、報復することもなく、グラウンドの端っこで、最後まで離れなかった「ユノ」と2人でいることが多かった。タイヨウと我々は、お互いに刺激することなく交わることもなく、そのまま卒業式を迎えた。
 文集で、タイヨウは前期の委員長としての誇りを記していた。3行ぐらいで。あとは屈託もないネタだけ。自分の胸のうちを語るわけでもなく、そっけないいい加減な文章だった。短気極まりない性格でなければ、きっとクラスの人気者として、また本来の賢さを発揮できたはずが、何をしたかったのか分からぬまま、その学校生活を終えた。

 勉強はもう少しできると思っていたが、タイヨウが進学したのは近くの平凡な高校だった。そこで上級生のパシリをやらされていたという話も聞いた。その後、消防士になったらしい。成人式で会ったときも頭の悪そうな80年代系不良リーゼントをしていたが、やはり周りには人はいなかったようだ。もう30を過ぎているのだが、無茶な人間関係を築いていないか、少し心配ではある。
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by lidth-s-jay | 2004-12-23 10:52 | 中学校専用