ミツ君とカツ君とアマノ

 ミツ君は小学高学年で同じクラスだった。
 図体はでかい方で色白の太め、水泳の水着着脱時の悩ましいポーズなど、ロリポチャショタにはたまらない体型だがカピバラちっくなマヌケ顔。知識知恵ともに最低レベル、運動もダメ、音楽図工書道もセンスなし、そして陰々鬱々な性格という、まさに取り柄が無い男子だった。
 



 そんな彼は、いつもカツ君の子分を勝手にやっていた。カツ君は勉強はミツ君レベルだが抜群の運動神経と温和で明るい性格で、誰からも好かれていた。ミツとカツは名前だけ松井ミツヒロと松山カツヒロ、まるでコンビのような共通性があったのだが、とにかくミツ君はカツ君の動くところについて回った。
 これをよく思わなかったのがアマノである。アマノもミツ君と全く同じスペックで、唯一勝っているのが「ずる賢さ」であった。普段はあまり物静かなアマノは、何故か私にはよく親しげにしていたのだが、話すことの大半はミツ君の悪口ばかりだった。アマノのくせに何でこんな強気なんだと思いつつも、確かにミツ君はアホだしコバンザメだったので、私もとりあえず同調していた。
 ミツ君をアフォ扱いしてたのはアマノに限ったわけではなく、他の連中もミツ君のバカさ加減や「カツ君へのコバンザメ状態」をいつも嘲笑していた。

 しかし、6年生のある時事件が起きた。いつものように笑いの種にされていたミツ君がいきなり切れて、鉛筆削り用の太いナイフを握り締め私たちを睨み凄んできたのだ。さすがにみんな慌てふためき「ばかミツやめろよ!分かったから!!」と説得を続け、事なきを得た。
 ところがその後、「あれ面白かったな」っていうアマノの言葉どおり、潜在的にあった「ミツ君をキレさせる」ことに快感を得てしまった連中は、ミツ暴風圏を察知しつつ、大好きなカツ君を引き離して反応を楽しんでいた。大抵は泣く程度で終わるのだが、奇声を上げたりモノを投げつけたりするミツ君に何らかのスリルを味わっていたのではないか、と思われる。
 一方のカツ君は、特に擁護もせず、かといってミツ君を避けず、という立場を続けていた。彼はただの優しさだけでない、強い男だった。
 
 ミツ君は中学入学後一度も同じクラスにならなかったこともあったが、記憶から消えている。 カツ君は高校に入学後、成績不振で落第したと悲しげに語る本人と話したのが最後だ。
 そしてアマノも中学ではやはり一度も同じクラスにならず、遊ぶこともなくなった。中学2年の時、親父が市議会議員に最下位当選したが、次の選挙では落選した。最近はアマノ本人が自宅の近くをウロついている、という目撃情報を、私の父から聞いている。
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by lidth-s-jay | 2004-12-01 05:20 | 同級生