えぬ先生の思い出(前編)

 高校1年生の時の話をしようと思う。いつも以上に唐突である。

 4月、雨の入学式の日。今まで2小学校からの集まりだった狭いコミュニティから、3市1町のわりと広い範囲から、高校受験によって同じような成績の連中が集まってきた。
 瑠璃カケスが所属したクラスもそのひとつ。男子の何気に漂う田舎臭さが特徴的ではあった。
 
 そこに、新担任がやってきた。えぬ先生である。

 男性で年齢が本当に分からない。多分当時24,5だと思う。我が高校に赴任して数学を担当していたが、担任を受け持つのは初めて。さっきも書いたとおり年齢不詳で、明らかにふけ顔。地方信用金庫の営業周りでバイク乗ってる人にいそうなタイプである。
 教室壇上の挨拶で、何か息巻いた雰囲気で持論を展開し始めた。「この学校は自由な校風がモットーだが、自由と言っても"freedom"ではない。"liberty"であることを忘れるな
 ・・・一瞬、みんな凍った。言いたいことは身勝手な自由ではなく、与えられた(権利としての)自由である、ということらしい。んが、だからどうしたというのだ。後ろで参観していた親も驚いていた。
 さらに「1年生のうちは大学志望に国立:名古屋大/私立:南山大、と書く連中が多いが、3年生になって同じく名大・南山と書くようなやつはバカである」と。これは意図が理解できなかったが、自分の成績や大学受験情報を把握せずにのうのうと知ってるところだけ挙げるな、ということか。もしそうだとしても、言い方というものがあるだろうが。クラスの初顔合わせ諸君ともども、いきなりゲンナリとした高校生活が始まった。

 このままいくとクラスも退屈なんだろうなあ、と諦めモードで入ったのが悪かったのか、まずクラスメイトの男女仲がよろしくなかった。敵対ではないが、ぜんぜん喋らない。男子が大人しすぎる、中学生そのままなヤツが多かったから、のと、女子も我々男に全く興味を持たなかったというのが重なったようだ。席配置も、男同士、女同士で並んでいた。
 恋や愛とかそういう次元ではなく、もはやクラス分裂、そんな状況になって、えぬ先生は何も言わなかった。じゃあテストの成績がよければいいのかというと、どちらかというと我がクラスは出来が悪かった。散々である。

 そんな中、「冷酷」「機械にしか見えない」えぬ先生の学級運営は続けられた。(つづく)
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by lidth-s-jay | 2007-06-02 06:16 | 高校専用